「王道」について

今日発売の雑誌、AERAに、
秋元康と日産のデザイン部だかの人が
対談している広告記事がのっている。
日産の高級セダン「FUGA」について語っているのだが、
タイトルは「王道とは何か」。
なんだかFUGAはセダンの王道とかなんとかごちゃごちゃ言ってるのだが、
あまりにも「王道」を連呼しているので呆れてしまった。
正統派とか安定感とか高級感とかメインストリームとかを言いたいのか。

これは誤用だ。

初めてこの使い方を見たのは、数年前、
どこのメーカーだったか忘れたが、缶コーヒーのCMだった。
コピーはずばり
「缶コーヒーの王道」。
ひょっとしたら広告業界で密かに広まっている、
新しい使い方なのかもしれない。

世界史を勉強した人ならわかると思うのだが、
王道とはふたつ意味があって、
ひとつは儒教の教えに基づく政治思想。
仁徳に基づいた武力に頼らない治世。
対義語は覇道。
もう一つは旧約聖書でモーゼがエジプトを脱出して
ヨルダンを北上した「王の道」。
そこから派生して近道、安易な道という意味だ。

この誤用は諺、「学問に王道なし」から来ているのかもしれない。
これは「学問には正統派の正しいやり方はない」
という意味ではなくて、
「学問に近道はない、コツコツ地道に勉強するのが最良の道だ」
という意味だ。
ちなみにこれは幾何学の祖、ユークリッドが、
エジプトのファラオの問いに対して答えた言葉とされる。
王道という言葉には、もともと正統派とか安定感なんていう意味はないのだ。
いわんや高級感をや。
その誤解と共に、二つの意味がごちゃごちゃに使われているのかもしれない。
以前から例えば「ダイエットの王道!蒟蒻うんぬん……」みたいな、
誤用(っぽい)用例はあったのだが、
結果的に「近道」に置き換えても差し支えない使い方だった。
つまり同じ名詞でも「物」を指す言葉に対しては使えない言葉なのだ。

ただの広告じゃなくてAERAとのバーターなんだから、
AERA編集部の文系インテリの連中がなんか言ったりはしないのかなあ?
まさか全員知らないなんてことあり得ないだろう。
別に「美しい日本語」とか唱えるつもりは全くないけど、
こんな誤用がまかり通って、コピーライターが金儲けしてるのはどうかと思うのだ。
「食の王道は寿司…セダンの王道はFUGA。」
誤用を利用して、コピーの印象を高めるというのはコピーライターの常套手段だけど、対象年齢層とか考えるとなんか天然ぽいというか…王道より王様の方がまだしっくりくる。
「王道」とか「王の道」は日本人以外も使う思想だったり故事だったりするんだし。
俺がただ単に細かいのかなあ…