ゲーム業界とアニメ業界での撮影(コンポジッター)の違い

アニメ業界でいう”撮影”という役職はアナログ時代の名残だ。
昔は撮影台という、巨大な顕微鏡のような形の装置があり、台の上に背景を載せて、その上にセル画を載せて、バシャッと上に設置されたカメラで撮っていたのだが、2010年現在、「サザエさん」を除いてこのやり方で撮影している国内のアニメーション会社はない。
おおかたの会社はスキャナーで取り込んだり、一からデジタル上で描いた各素材をAdobe After Effectsを使って合成している。

だからゲーム会社のコンポジッター、あるいは映像業界のコンポジッターと、アニメ業界の撮影は使う機材としてはほぼ変わらない環境にある。
で、やってることもほぼ変わらない。
基本的には他部署が制作した素材―背景とキャラクターとを合成する。特殊効果を追加したり、画面の質感を高めたり統一したりする。
また編集の仕事になる場合も多いが、セリフや音楽、音効を合わせたりすることもある。
つまり最終的に視聴者もしくはユーザーが目にする映像はコンポジッターが作る。

でもここからが大事なんだけど、アニメ業界のコンポジッターはタイミングに対する権限を持っていない。
具体的に例を挙げる。

あるカット(シーン)がある。
原画さんが作り、作画監督、演出がOKを出したタイムシートに沿って、合成する。
すると、動かすタイミングがおかしい。こういうことはどんなに熟達した作画監督や演出でも起こる。やっぱり実際やってみなくちゃわからないことはある。

この時、撮影は制作進行にまず連絡する。で「タイミングおかしいんで、演出さんにタイムシートの変更をお願いしたい」旨を伝える。すると制作進行から聞いた演出さんが撮影したものを確認しにやってきて、「あーホントだ」と言ってカット袋を持ち帰る。あとで修正されたタイムシートが制作進行から渡される。
撮影が外注だった場合、撮影はわざと間違ったタイミングで一回レンダリングして、演出チェックの時に「これ間違ってると思うんですけど…」と言いながらムービーを再生する。

アニメ業界にいるときはこれでごく当たり前だと思ってたけど、これは映像業界一般からすると、ちょっと変わっている。
「なんかタイミングおかしかったんで直しておきました」というのが他の業界のコンポジッターのスタンスだと思う。
つまり、各部署で作成した素材を自分が料理する、という意識。
え?動きのタイミングを自分の意思で変えられないって一体アニメ業界のコンポジッターって何をしてるの?ただのAfter Effectsオペレーター?
極端に言えばそんな感じだと思う。
アニメの場合、動きはやっぱりアニメーターありき。アニメーターはただ単に絵を描くだけじゃなくて、そのタイミングについても、絶対の権限を持っている。

なんでこんなことを思ったかというと、最近元同僚のアニメ撮影監督が、私の今いる会社に派遣でくる話があったんだけど、上記の理由から頓挫したり、私の部下で動画や第2原画出身の人達が、現状単なる絵作りの人になっちゃってて、タイミングの勉強が出来てないのが可哀想だったりといった状況の今日この頃だから。

アニメ業界のコンポジッターは他の業界では使い物にならないし、ゲーム業界の絵師はいくら上手くても、アニメーターにはなれない。
誰が悪いわけでもないんだけど、その辺よくわからずになんとなく業界に飛び込んじゃうと、あとでにっちもさっちもいかなくなる。