子供の絵は本当に純粋なのか?

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よく「子供の絵は素晴らしい」というようなことを言いますよね。
大人のように、上手く描こうとか、こう描いたら恥ずかしいとか、邪念がない。
ありのままの印象を、素直に描くから、印象派顔負けの色彩感覚だ。
心の中で思った事がそのまま投影される。

僕はそうは思っていません。

いや、もし今描いたような事が当てはまるとしたら、せいぜい2歳から3歳くらいまでの乳児から幼児になるくらいの年代かなぁと思います。

僕が幼稚園の年少の時のことです。
僕はタンポポ組の演劇で、ライオンの役をやる事になりました。
もはや演目がなんだったかも覚えていないのですが、とにかく僕はライオンの役でした。
僕のほかにライオンをやる人は4人。計5人がライオン役です。
セリフをだんだんおぼえて、そのあとは立ち稽古。
みんな頑張って、本番の発表会に向けて練習していきます。

そして本番がいよいよ近づいてきた日、衣装を作る時間が設けられて、みんなそれぞれの衣装を作る事になりました。
僕が作るのはもちろんライオンの衣装です。
画用紙にライオンの絵を描いて、ハサミで切り抜き、お面を作ります。
ライオンの役の5人は一ヶ所に集まって、教室の床に画用紙を置いて、クレヨンでめいめい描き始めました。
僕は当時、動物図鑑が好きで、ライオンの事もよく知っているから、上手に描けるぞ、と内心張り切っていました。

で、描きあがってみんなと比べあってみてビックリしました。
他の子が描いたライオンと僕の描いたライオンが全然違うのです。
上の絵で言うと、左がみんなが描いたライオン、右が僕が描いたライオンです。
(上の絵自体は今の僕がパソコンで描いたイメージです)

そして、みんなは僕のライオンを見て、「こんなのライオンじゃない」と言いました。
「なんでたてがみが無くて毛が生えてるの?」
「なんで目がこわくないの?」
「にんげんみたい」

僕はビックリしました。
そしてみんなの絵をみて思いました。

ライオンのたてがみはそんなにギザギザしてないよ
それにライオンのたてがみは毛がいっぱい集まってできてるんだよ
ライオンの歯はそんなにとがってないよ
ライオンの目はそんなに白目が多くないし、そんなにつりあがってないよ

でも気が弱かったのでなにも言えず泣いてしまいました。

少し経って、みんながなんでライオンをああいう風に描いたかわかりました。
みんなはライオンじゃなくて、「絵本に出てくるライオンの絵」を描いていたのです。

「こういう風に描くとライオンらしく描ける」ということをみんなは知っていたのです。

この話はだいたい僕が3歳から4歳頃の話なので、少なくとも幼稚園に通う頃には、多くの子供はありのままというより、みんなより上手な絵を描きたいと思っている、ということがわかります。
僕自身、絵をもっと上手に描けるようになりたいと思っていました。
でも手が思うように動かないし、いい色で塗れなかった。
そんな記憶です。