この間、知り合いのイラストレーターの方とちょっと話をしました。
彼女は私と同い年。
雑誌ananの挿画を数年やっていて
(ananはだいたい1~2年でイラストレーターを入れ替えるので、彼女は異例らしい)
他雑誌にもいくつか定期的な仕事を抱えていて、
自分名義の書籍を数冊出版、
文具のデザインなども手がけている。
まあイラストレーターとして活躍して成功しているといえると思う。
でもお互い因果な商売だよね、ということで意見は一致しました。
絵を描いてお金をもらうのは、どこか切ない。
自分の絵がどういう価値を持っているか?
ほとんどの場合、絵描きは上手だから絵描きなのではない。
巧ければ価値が高まるのならば、努力すればいい。
例えば精緻な地図や科学イラストを描くプロのイラストレーター。
でも今はほとんどCGで作られている。
じゃあ才能があるからか?といえばそういうわけでもない。
20歳そこそこなら「才能あるよ」といわれて、
調子にも乗るけど、もうわかってる。
イラストレーターで、「才能がある」ということは、
アートディレクターやプランナーの「その時の」琴線に触れるかどうか、
ということだ。
そして、その琴線自体が、ひとつの「チャンネル」でしかない。
市場と言ってもいい。
例えば「ニューヨークのファインアート市場」のチャンネル。
「二科展」のチャンネル。
雑誌「イラストレーション」のチャンネル。
「アートアニメーション」のチャンネル。
「マンガ・アニメ」のチャンネル。
(蛇足だけど、美大受験に於けるチャンネルも、もちろん存在する。
海外と日本はもちろん、関東と関西で、良しとされるデッサンは違ってくる。
一言で言えば、関東は立体感重視、関西は陰影重視なのだ)
そのどの視点から見ても普遍的な価値を持つ絵なんて存在しない。
そして露出が増えれば、消費されて、古くなる。
つまり、イラストレーターは、ラッキーボーイ、ラッキーガールなのだ。
なので、長く続ける人は、アートディレクションなりへと、
イラスト以外の分野に進出することになる。
30歳前後というのは、その軸足をどこに移していこうかと、
考える時期なのだと思う。
私も考え中であります。