はじめまして。
ご質問の、アニメの背景美術を志すにあたって、これから専門学校でデジタルメインのコースと、アナログメインのコースのどちらを選ぶべきか、という件についてお答えします。
まずアニメ業界で背景美術に携わる人にとっての、おそらく共通の認識としては、
- アナログで絵を描いてきた人がデジタルで絵を描く→可能
- デジタルで絵を描いてきた人がアナログで絵を描く→不可能
ということです。
漫画家でも、今までコピックや絵の具やカラーインクを使っていた人がデジタル彩色になることはあっても、今までデジタル彩色だった人が、アナログの画材で描くようになった例ってほとんど無いですよね。
ですから、アナログとデジタルどちらを学ぶのが良いか、という質問に対しての答えとしては、ぶっちゃけつぶしがきくのはアナログだと言っていいと思います。
アナログか、デジタルか、という問題は、プロの場合は予算だったり納期だったり、いろんな事情でシビアな問題ですが、勉強の場合は、画力の向上や、色彩やパースを学んだり、発想するためにアニメ以外にもいろんなものを観たり読んだり、ということのほうがはるかに大切です。
傾向として、デジタルがメインのコースの方が、集まる生徒も、カリキュラムも、アナログメインのコースに比べると、画力の向上について軽視する傾向が強いと個人的には考えています。
Photoshopの操作とかというのは、所詮は手段ですし、もしアナログである程度の絵を描ける人なら、教えてくれる先生なり先輩がそばにいれば、数週間もすれば、Photoshopとタブレットである程度のものは描けるようになるはずです。
で、ここからが難しいところなのですが、不況だったり、アニメの製作本数が減っていたりで、以前にも増して、今、アニメ業界で新人を育てる余裕のあるところは多くありません。
そして、アニメーションの背景美術は1からデジタルで描いている会社が5~6割くらい。
アナログの絵をデジタル加工して使っている会社が残り4割。
(比率は調べたわけではないので違っているかもしれません。でも年々デジタルの比率が増えてきているのは確かです)
ごく一部を除くとほとんどの背景美術にはデジタルの工程が入っています。
(デジタルの工程と言っても、スキャンしてちょっと色を整えたり、効果を加えたりといったごく控えめなものから、紙にポスターカラーで描いた絵をベースに、デジタルでガンガン絵作りしていくものまでピンキリです)
だから、上記の「Photoshopを教える数週間」をケチるために、とりあえずPhotoshopを使ってなんとなく絵を描ける人を採る会社というのは多いかもしれません。
そう考えると、デジタルメインで勉強して、なんとか背景美術の会社にもぐり込んで、数をこなしていくうちに絵も上達していく…というのも、それはそれでアリなのかもしれない。
ちなみに私は某専門学校でデジタルで絵を描く的な授業を教えていたり、一方で会社で就職希望者のポートフォリオ(作品集)に目を通したり、面接官をしたりもしています。
それにサイトでPhotoshopのブラシのカスタマイズの記事を書いたりもしている。
だからデジタルメインのコースを推すのが筋なのかもしれませんが、たぶん今時のアニメーションを教える専門学校でデジタルの工程を全く教えないってことは無いと思うんです。
だから、アナログメインで勉強して、Photoshopで作った作品もいくつかありますよ、くらいが、一番バランスがいいような気がします。
もうひとつ。
アナログの画材…背景美術の場合はポスターカラーと画用紙と筆…で学んで、なおかつ絵がうまい人は、得てして、アナログの画材自体に愛着が湧いて、デジタルで絵を描くのを嫌うことがあります。
いや、今はさすがに無いかな…
まあとにかく、それは悪いことではもちろんありませんが、好きか嫌いかに関わらず、新しいものに対して貪欲な姿勢を持つ、というのもまた大事だと思います。
…と、くどくどと書きましたが、結局絵が上手ければどっちでもOKってことです。
バリバリたくさん絵を描いてください!
それでは失礼いたします。
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